「たたら製鉄」は1400年以上前から伝わる日本古来の製鉄法。
奥出雲地方は、良質な砂鉄や山林資源に恵まれていたことから日本の鉄づくりの中心地として繁栄しました。
江戸時代には技術革新によって飛躍的に生産量が増え、産業化が進展。
最盛期には地域全体で国内の鉄生産の8割を賄っていたといわれています。
「たたら製鉄」は炉を建造して行います。
良質な土を用いますが、高熱に晒され続けるため1回の操業ごとに取り壊されます。
操業の技術責任者は「村下(むらげ)」と呼ばれます。
炎の色や燃焼の音を見極め、工程の全てを指揮。長年の経験と勘、培われた技術が美しく強い鉄を生み出す要となります。
炉に砂鉄・木炭をくべ、三日三晩かけてじっくりと燃焼。
徐々に不純物が排出され、純度の高い「鉧(けら)」と呼ばれる鉄の塊が精製されます。
1000年以上かけて工夫され進化してきた「たたら製鉄」。
知恵と技術の結晶であり、日本のモノづくりの原点ともいえるでしょう。
明治に入ると、海外から安価な洋鉄や溶鉱炉などの技術が流入。
日本の製鉄産業は様変わりし、大正末期に「たたら製鉄」は産業としての役割を終えました。
しかし、「たたら製鉄」が培った風土は脈々と受け継がれており、
循環型の産業と営みは現代においてその価値を再び見直されています。