出雲大社が熾した火で操業開始
こんにちは、たたライターです!
今回は6月に行われた「たたら操業」の様子をお伝えします。
6月25日、26日に2022年春のたたら操業が実施されました。2日間かけて昔から伝わる製鉄法「たたら」で鉄を生産する、たたらの里の年間プロジェクトです。
全体の流れを聞く参加者の皆さん
初日の朝、スタッフや関係者、一般参加者の皆さんで操業の安全と無事を祈願。
神事の最後に炉を点火して操業をスタートさせるのですが、この種火には出雲大社で熾された火が用いられています。
2018年の操業再開の時に100年ぶりのたたら操業を出雲大社に報告したところ、出雲大社で熾した火を頂戴することに。以来大切に保管されているそうです。
25代当主の田部長右衛門氏が代表で拝礼
高温で砂鉄を溶かして鉄を精錬
たたら操業では、砂鉄を高温で燃焼させて不純物を取り除き、鉄を精錬するのが一連の流れ。
まずは炉に木炭を連続で入れて炉内の温度をどんどん上げていきます。温度が十分に上がると砂鉄を投入。
1回の操業で用いる砂鉄は合計500㎏、木炭は700㎏ほど。合わせると1トン以上(!)が炉に投入されます。
いい鉄を作るためのポイントは、砂鉄を炉へ丁寧に注ぐこと。
交互に投入された木炭と砂鉄が時間をかけてゆっくり燃焼することで大きな鉄の塊が作られていきます。
木炭、砂鉄が綺麗なミルフィーユ状になっているのが理想だそうです。
種鋤(たねすき)で砂鉄を投入
送風装置から風を送って炉を熱し続けると、温度はなんと1300℃にも達します!
建物内は空調があるため、そこまで暑いというわけではありませんが、それでも炉の近くで作業をしている皆さんは大変そうです。
木炭は30分ごとに入れ続ける
燃えながら流れる不純物のノロ
木炭と砂鉄を入れ続けて3時間ほど経つと、ノロ(鉄滓)と呼ばれる不純物が溜まってきます。
ノロを排出するために塞いでいた穴を開けると、真っ赤に燃えたノロがゆっくりと流れ出しました。
最初に出るノロのことを初花(はつはな)と言います。
穴から流れ出すノロ
ノロは鉄に比べて軽くてもろく、ハンマーで叩くと粉々に割れてしまいます。
ノロが冷えて固まったもの
操業クライマックスの鉧出し
操業は夜通し続きます。今回の操業は2日間ですが、昔は3昼夜連続で行っていたそうです。
しかも鞴(ふいご)を足で踏み人力で風を送っていたので、交代制とはいえ、すごくハードな仕事だったのではないでしょうか。
2日目の朝はいよいよ炉から鉧(ケラ)と呼ばれる鉄の塊を取り出す「鉧出し」です。
スタッフの方によると、どのぐらいの大きさ、どんな質の鉧が出来ているかは開けてみるまでは分からないとのこと。
ちゃんと鉄の塊になっているだろうか……ドキドキしながら見守ります。
ノロが冷えて固まったもの
炉を解体すると、赤く輝く鉧が出現しました! 今回は形も良く上質な鉄になっているそうです。
鉧を目にすると参加者の皆さんもとても達成感にあふれた笑顔に。
大人になっても同じ目的に向かって取り組み、一緒に喜び合えるのって素敵だなと感じました。
鉧出しではさらに熱気に包まれます!
日本の文化「たたら」を多くの人に知ってほしい!
取り出した鉧は参加者に記念品として配るほか、製品にも使用されます。
参加された方からは「仕事も出身も違う人と同じ目的に向かって一体となれた」「結果だけでなくプロセスも大事だと感じられた」といった声が聞かれました。
今回の操業では120㎏の鉧を生産しました!
たたら操業は吉田町や田部家にとってもルーツとなるものとして、これからも定期的な開催が予定されています。
たたら操業を直に見て参加できる機会というのは全国的にもあまりありませんので、日本独自の文化や歴史を知る貴重な経験になるはずです。
見学も可能ですので、ぜひ次回の開催をチェックしてみてください!